放課後を迎えた。


私達は、近所にあるサッカーができる大きい公園にやって来た。もともと、このあたりが静かだからか人通りも住宅も少ない。あるのは、お金持ちか、と思わせるほどのバカでかい私の家、それと同レベルくらいでかい空翔の家、美南の家ぐらい。本当に、静かなこの辺が私は好きだった。


「じゃ、やるか」


「うん」

サッカーのルールよく知らないんだよね。ネットにゴールを入れたら得点が入る、というぐらい…。


「シュートは、できるか?」

空翔の言葉に、ムッとしてしまう。


「それくらい、出来ますよ〜、だ」


「じゃ、やってみろよ」


そう言って、自信満々でシュートを打ってみた。

が、失敗。


「あ、あれ?最近やっていないからかな?おかしいよ〜」

「ブッ」

見ると、空翔が笑いを堪えていた。いや、堪えられていない。


「あ〜、涙出てきた。なんだろ、この感情。笑えるわ〜」


むぅ。失礼だな。


「もう、答え出ているじゃん」


「えっ?」

わからない、という表情を浮かべる空翔。


「それはね、“面白い”という感情だよ」

「面白い、か…」


しばらく、空翔は黙っていた。面白いという感情について深く考えているかもしれない。



「ん、愛。俺がお手本見せてやる」


そう言って、シュートを打った。


結果は、見事ゴール!


「すごい!」


「ははっ。なんだろう、な。また、感情を思い出した。褒められると、心がくすぐったくなる。この感情は、なんだ愛?」


え、それって…。え、でも?んん?どっちー?

「そ、それはね、多分?だけど“嬉しい”って感情じゃない?」


「嬉しい」


1日に2つも感情を蘇った空翔。あと、残るのは、悲しい、感謝。あと、好き、かな?あ、いやLikeだけど…。でも、私のことを好きになったら両思いだな〜って。


「愛、そろそろ帰らないといけない時間じゃないか?」


そう言って、フワリと笑顔を浮かべた。


ドキッと心臓が音を立てた。あまりにも自然で、少しあどけなさが残った笑顔。その笑顔を、ずっと忘れたくなかった。


「あ、うん。で、でも最後に1枚だけ写真撮りたくない?」


「写真?」


「そう。空翔と」


しばらく、考えポーズをしてからいいよ、と言った。

あれ?空翔、優しくなっている。これも感情のお陰?とりあえず、良かった…。これが、本来の空翔なんだろう。

「はいチーズ」

パシャとカメラの音が静かな夕方の公園に響いた。


最初の写真は、気恥ずかしそうな顔だけど笑顔の八木愛とフワリと優しい笑顔を浮かべる吉村空翔のツーショットだった。