翌日、私は待ち合わせの所に向かった。

着くと、もう空翔はそこにいた。


「愛!」

爽やかに手を振っていたが私の硬い表情を見て顔が曇った。


「空翔…」

「何?」

「大事なお話が、あるの」

コクリと頷いて近くにあったベンチに隣同士で座った。


心臓は、バクバクしていたけれど気に留めなかった。


「んで?」


「あのね、空さんのことについて、なの」

空翔の瞳が揺れた。


「空さん、は13歳のとき事故にあって亡くなってしまったでしょう?」

「うん」


「実はね、私には1人の姉がいた」


この「姉」というワードを出すたび胸が苦しくなる。それくらい、私は麻優お姉ちゃんが大好きだった。


「その姉は、私とは3歳差で、姉はもういないの」

「…」

「死んじゃった。3年前の夏に」


ふと、空翔の顔をみると驚きを隠せない様子で、でも話の糸口が見えてきたという顔をしていた。


「もし、かして…」


「そう、だよ。姉は、人一倍優しかったから。困っている人を助けて、そういう職業に就きたいって言っていたのに…。その夢は、3年前のときで途切れた。でも、最後の最後で姉は人を助けた。でも、さ、その子も死んじゃったけど…」

「お姉ちゃんは、空翔の妹の空さんを庇って死んだの!」


気がつくと、涙が溢れ出ていた。いや、出ていたのかもしれない。それに今気がついたのかも…。


「そん、な…」

空翔は、うなだれていた。


私達には、こんな関係があったんだね。

姉を亡くした八木愛と妹を亡くした吉村空翔。


「見て、空翔」


そう言って、昨夜見た記事を、見せ2人で泣きまくった。


これで、いいんだよねー?麻優お姉ちゃん。


「ありがとう、愛」

そんな声が聞こえた気がした。


「でね、空翔。これからうちに来ない?話さなくちゃいけないこともあるし」


「ありがとう、愛」


え、“ありがとう”?もしかして、感謝の気持ちを?


「また、1つ蘇った」

そう言って、くしゃりと笑った。