お母さんが唐揚げを作ってくれて、食べ終わる頃には時計の針が、21時をとっくに過ぎていた。

「お父さん、ななこの顔見に週末帰ってくるってさ」
「……え?」
「さっきななこを探しながらお父さんに電話したら、お父さん凄い心配してた。……私達、全然ななこに寄り添ってなかったなって反省した。本当にごめんね」
「……」


 正直お父さんと話したい事は特に無い。だけど、皆が揃って食べるご飯はいつもより美味しくて、帰ってくるお父さんのお土産はいつも楽しみだった。

「……学校は行きたい時に行けば良いよ。お母さん、もう無理言わないし、選択肢の一つとしては学校変えても良いしさ。ま、その時は担任と虐めたクラスメイトに詰めよってやるけどね」

 お母さんなら本当にやりかねないが、こうして私の事を考えてくれるのは嬉しい。
 だからといって、明日からじゃあ行こうと思う程私は気持ちを切り替えられない。
 また虐められたらと、お腹がキリキリッと痛む。

「ゆっくりでいいよ」

 未だに閉まって出せない学校の制服を、いつか取り出せる時が来るのかな。
 だけど、お母さんがそう言うなら急がなくても良いのかもしれない。

 今日の夜は、良い夢を見れそうだ。






 昨日、よっぽど神経を使ったのか、目が覚めると初めての寝坊。お母さんはとっくに居なくなっていたが、台所には綺麗な形の目玉焼き、パリパリのソーセージに味噌汁まで作っておいてくれていた。
 炊飯器を開けると、炊きたての白いご飯が湯気を出しながら良い匂いをさせている。
 目玉焼きにソースをかけて食べると、何となく考える。
 目玉焼きにソースって変なのかな?醤油が普通だよって言われても、私はこれが好きなんだけどな。

 何だか考えていると、かとま君の好きな物を貫く気持ちと同じかなって少しだけ思った。

 今日は……かとま君学校に行ったのかな?
 それとも空を見て、飛行機をワンちゃんと探しているのかな?
ご飯を食べたらあの公園に行ってみよう。
 もしあそこに居なくても、彼が学校に行きたいと思う気分だったんだねと納得出来る不思議な感情。

 窓を見ると晴天。
 青い空が空一面に広がって、インドアの私でも気持ちが良くなる天気だ。
 だけどその下にはまだまだ溶けない雪の残骸があちこち残っている。
靴を履いて外に出ると、やっぱり冷たい冬の空気。
衣類の上から貼るカイロをお腹にセットして、ザクッと雪を踏んで公園に向かった。