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 ジョナスの部下たちの横死させられた仇が取りざたされてから、三カ月ほどは何事もなかった。
 少佐は参事会の選挙に出馬し、無事に当選。
 祝賀会パーティーで「爆弾」が爆発して、集まっていた支持者たち数十名が死亡。それらは選挙のために妥協していた魔族ギャング。人間に紛れていた魔族二名は「特殊な剣」で切られて回復魔法による復活すら叶わず惨殺。
 ジョナス大尉は清々しい顔で、さらに爆破トラップ魔法を起爆しようとするトラを制止した。これ以上の破壊は無駄で修理費用は経費や税金だから。「こいつもストレス溜まってそうだな」「はっちゃけたな」などと思いつつ、笑いをこらえた顔で首を左右し「そのあたりでやめとけ、もう十分だし建物の修理の手間がかかるから」と。

「囮役も、ご苦労。「反魔族の狂った過激派テロリストがいる(トラバサミの鉄仮面の、狂った魔法使いの好戦派が)。だが我々はそこまでの強硬策は望まない、現実的かつ賢明に君たち売国奴と妥協や取引しよう。その危険分子の情報を売ってやるから選挙協力しろ」って。
俺らのグループは「票で買収」されて護衛してやるって口実で騙して、こいつら逃がさないように周りを固めていた。アホだな、あとで全員皆殺しにするに決まってるだろ? フライングで殺してやろうか、何十回迷ったことか!」

「その剣、あんたが持っていたのか」

「これか? いつぞや「辻斬り」していた買収で成金貴族の武芸者を始末したときに手に入れたんだが。まさかお前の腕、これでやられたのか?」

 ジョナスは「業物・魔術者殺し」を見せた。
 装飾からして、たぶんあのときのものだ。
 トラの切り落とされた右腕を接合できなかったのは、その魔剣の「回復魔法への阻害」という効能が原因。キチガイに刃物、バカとハサミ。

「そうだったのか。それにしたって、お前って魔術者では強い方なわけか?」

「戦いだけならそこそこやる方だろうが。戦術や肉弾戦の格闘も含めての総合力としては。
魔術者としての認定ランクは十二階級の上から六番目。ただ、広い意味での魔法能力がある人間の七八割くらいまでは八か七ランク止まりくらいだろうけど。半分は一生かかって九ランクにもなれるかどうかだろ、資質的に」

「だが? だったら魔術協会には、お前みたいなのが何千人も何万人もゴロゴロいるわけか。並以下の下っ端や弱い下手な奴らを入れたらもっと幾らでもいるのか。
戦闘の能力のこと言っているんだが。だったら、あいつらがどんだけサボって裏切りしてるのかってことになるが。お前と同レベルの奴が千人なり二千人なり積極的に軍やレジスタンスと一緒に魔族と戦っていたら、それだけでも悪くない戦力だし、戦局が変わるんじゃないのか?
能力のある奴が「いない・足りない」というよりも、魔術協会方針とか指導でわざと手を抜いたり協力拒否したり、戦わずに逃げまくってサボっているのか? それで魔族ギャングからご褒美の金や利益を得られるってことなのか?」

「その認識で、だいたい合っていると思う」

 魔術協会のグループ・ネットワークは人間の魔法使い・魔術者の資質や能力がある人員や知識・ノウハウやデータ以外にも、魔術の資材や魔法効果のある武器や道具類なども大量に独占的に支配下に置いている。それが故意に戦わず、場合によっては政治的に駆け引きして、味方側の反魔族の政治家や警察・軍・レジスタンスに圧力や妨害すらしている。特殊なエリート党派意識はほとんど選民思想じみていて、自分たちを「第二の魔族」になぞらえたり憧れや共感するような風潮があって、そいつらが人間の魔法使い・魔術者たちを指揮・統制や指導して、人事権や地位ポストの推薦や指名権どころかランク付け・評価なども握っている。魔術者全般への影響は絶大で、裏を知っている者らの間では、それが人間陣営を対魔族戦争で劣勢にしている原因にも数えられている。
 トラとジョナス大尉は苦い顔になる。
 だがさっさと町を脱出して、山や森のレジスタンス拠点に行かなくては。もはや体裁上ではテロリストや犯罪者と大差がないからだ。
 ほぼ同時に町中をゲリラ粛清で魔族ギャングに殺戮していた実行者は数十名くらいいるのだけれど、それらが全員逃げるわけではない。事後にも反魔族レジスタンスの戦力として防衛・威嚇・掃討する人員が町に残っている必要はある。あまりにもあからさまに殺しまくって(魔族やギャング側との)「裏協定」にも違反なやり方だから、誰かしら「こいつらがやりました、逃げました」という形式上の代表者が必要な次第である。

「ひとまず、最寄りのレジスタンス拠点に話は通してある。あっちの裏切り者どもの町のことは、いったんそっちに着いてからも改めて考えよう」

 トラとジョナス大尉は森林地帯へと旅だった。



(三話へ続く?)
※携帯スマホで簡潔・要約的に書いてますw