目を覚ますと、見慣れた病院にいた。
 腕には点滴がついている。テープでぐるぐる巻きにされていて感覚がない。

 またか、と思った。小さい頃から何度も繰り返してきた光景。
 最近はさすがに無理をすることもなくなって、診察以外で病院に来ることもなくなってたのに。

「柚葉!」

 お母さんが気づいて、私の手をとった。

「お母さん、私……」
「学校の帰りに道で倒れたのよ。すぐに救急車を呼んでもらえてよかったわ」
「ごめん。心配かけて」
「いいのよ、心配なんて。それより、あの子にお礼を言わないとね」
「あの子……?」
「笹ヶ瀬くん。同じクラスって言ってたわよ」
 そのとき、ガラリと扉が開いて、ビクッと肩が震えた。

「あ、高梁さん起きて……って何してるの?」

 ……しまった。とっさに布団をかぶってしまった。

 だって、こんなパジャマみたいな病院着、恥ずかしくて見せられない。
 チラリと布団からのぞくと、笹ヶ瀬くんがホッとした顔で言った。

「ほんとに、よかった」
「ありがとう……でもなんで気づいたの?」
「高梁さんに呼ばれたから」

 笹ヶ瀬くんが少し迷うように、言った。
 え? 呼んだ? 私が……?

「あなたね、自分で笹ヶ瀬くんに電話かけたんでしょ」
 呆れたように言うお母さん。
「ええっ、知らない!」

 自分で平気ぶっておいて助け求めるとか、バカなの私。
 間抜けにもほどがあるんだけど。
 恥ずかしさを飲み込んで、布団から半分顔を出した。

「……ありがとう」
「うん、どういたしまして」
 笹ヶ瀬くんは笑って言った。