「佐野?」

 戸惑いのまざった笑みを浮かべた佐野は、メリクリと言った。
 わたしも同じようにメリクリと返し、二人で首を(かし)げる。

「なんで佐野がここに?」

「明希から呼び出されて。安藤は?」

「わたしはここのロッカーを開けるように、明希から指示をもらって」

「なんだそれ? 意味わからないな」

 佐野が笑うので、わたしも同じように笑った。
 なぜだか胸には不安が押し寄せてきた。

「それにしても、寒いな。安藤、平気?」

「うん。平気」

「とりあえず、ロッカー開けてみるか」

「え……」

「こうしてここにいたって、寒いしさ。その紙にロッカーの暗証番号が書いてあるの? 貸して」

 わたしの手から紙片を取った佐野が、暗証番号を押していく。

 やめて。開けないで。

 胸騒ぎを覚え、声を絞り出す。

「や、やめよう。開けないでいいよっ」

 わたしの言葉を覆うようにガチャンを音を立て、鍵は解除された。
 佐野の手がロッカーの扉を引く。