「プレゼントは、なしって……。わたし、本当に用意してなかったよ。ごめん、どうしよう」

「ストップ」

「あ、ごめんじゃなくて……。ありがとう」

 でも、と言いかけると同時に、信号が青に変わった。

「それ、すぐに開けて」

 そう言って、星よりも明るい笑顔を一瞬だけ向けて、明希は駆け出した。
 人波をすり抜け、そのまま一直線に駅の改札のなかまで通り抜けていく。

 缶コーヒーを飲まれてしまったときのように、わたしはまたなにも出来ずに固まっていた。

「……どういうこと?」

 思わず声に出していた。隣にいたカップルが、不審そうにわたしを見る。
 その視線に耐えられず、振り切るように封筒を開いた。

 封筒のなかには、手のひらに収まるほどの紙片。
 『ロッカーご利用証明書』と印字されている。
 
 もしかして。

 わたしは急いで証明書に印字されたロッカーに向かった。

 明希がエモエモのエモ、と評した漫画。
 それは主人公とその幼なじみとの、友達以上、恋人未満の関係を描いた物語だった。