★★★

 閉園時間いっぱいまで歩き回って空を仰ぐと、星たちが瞬いていた。

 いつもより早い時間から輝く星たちは、今日がクリスマスイブだと知っているのかもしれない。
 ゲートを出て駅へ向かう人たちは皆、うれしそうに「疲れた」と口にしている。

「似てたな、プレーリードッグ」

「似てたって、なにに?」

「小春ちゃん、プレーリードッグに似てるって言われない?」

「えー? はじめて言われた」

 笑って答えたものの、内心は穏やかではなかった。

 プレーリードッグの柵の前で、明希はかわいいかわいいと呆れるくらいに連呼して、なかなか離れなかった。
 ぐるりと動物園を一周したあとに、「もう一度見たい」とまで言った。

 深い意味はないとわかっていても、春の海のように胸が鳴る。

「ほい」

 駅前で信号待ちをしていると、明希はとつぜん真っ白な封筒を差し出した。

「え、なに?」

「小春ちゃんにクリスマスプレゼント」