「そうだな。いい予行練習だな。次はポップコーン、ぜったい食べような」

「……つぎ」

「うん。次」

 明希はへらっと笑い、口からは真っ白な八重歯が覗いた。

 今日も家まで送ってくれたので、そのまま外で待ってもらい、わたしは急いでエコバッグに漫画を詰め込んで明希に渡した。
 おすすめを絞るのは難しくて、エコバッグははち切れそうだった。

「ちょっと減らす?」と訊くと、「まさか。ぜんぶ読む」と明希はうれしそうに笑った。
 テディベア柄のエコバッグをしっかりと抱き抱えて帰っていく明希は、きっと彼女が出来たら大事にするだろうな、とわたしは思った。

 次の日のノートには、くまぬちゃんの吹き出しに『少女漫画おもしろいな! これがエモいってやつか。水族館、明後日はどう?』と書かれていた。
 その下には箇条書きで漫画ごとの感想がびっしり書かれていたので、授業そっちのけでわたしは見入った。

 わたしの不動のナンバーワン少女漫画は『エモエモのエモ』と賞賛されていた。