映画の翌日も早く登校して、ノートを交換した。
 ノートには、またもやくまぬちゃんがでかでかと描かれていた。やっぱりかわいくない。

『映画おもしろかった! 次は水族館 or 動物園(行きたい方に丸つけて)』

 くまぬちゃんの口から奇妙にのびる吹き出しに、子どものような字で書かれたメッセージ。
 ふふっと笑い、わたしは水族館に丸をつけた。

 放課後はまたドーナツ屋の前で待ち合わせ、近くの公園のベンチに並んで座った。錆びたブランコがキィキィと乾いた音を立てる。

 明希いわく、「公園のベンチってカップルぽい」のだそうだ。

「昨日さ、親になんか言われなかった? 帰り遅い、とか」

「ぜんぜん。うち、けっこうゆるいから」

「そっか」

「明希こそどうだったの? 自分ちに着いたの、けっこう遅い時間だったでしょ」

「平気平気。ぜんぜん平気」

「そう? 映画、つき合わせちゃってごめんね。あの映画、明希の好みじゃなかったよね」

 映画は少女漫画が原作の胸きゅん必至ラブストーリーだった。

 冴えない主人公がひょんなことから学校一かっこいい先輩と親しくなり、恋のライバルが登場したり、ふたりの気持ちがすれ違ったりを乗り越え、めでたくカップルになる――という王道物語。