ぽってりとして、冬だというのに血色がいい。それに、やわらかそう――なんて考えていると、ピンク色の唇はにっこり微笑んだ。
 急いで視線を逸らし、熱くなる耳朶を感じながら、わたしは必死に考える。

 いま一番大事なのは、黙っていてもらうこと。
 すごく親しい男友達と放課後を一緒に過ごしたりするだけ、と考えてみれば、問題はない気がする。それに明希に宿題をやってもらえるという、メリットだってある。

「それって、いつまでやるの?」

「さあて、そろそろ帰るか」

 明希はわたしの言葉を遮るように言い、「小春ちゃんちまで送るね」と続けた。遠回りさせるからいいと断っても、「これも彼氏っぽいことだから」と返された。

 ずっと車道側を歩き、満員電車で潰されそうなわたしをガードする明希は確かに彼氏っぽくて、不覚にもわたしの胸はほのかに甘く締めつけられてしまった。