――芳賀は。
芳賀は、わたしのこの事態に責任をとるべきだ。

九月に入ったというのに、今夜はやたらと蒸し暑い。
群青色のインクをひっくり返した空の下はひぐらしの声だけが涼やかで、湿気を(はら)んだねっとりとした空気は重い。

Tシャツを脱ぎたい。
シャワーを浴びたい。
ビールをがぶ飲みしたい。

今日のロードショーは海外のアクション映画だった気がする。
車がガンガン走って、いろいろふっ飛ぶやつ。
くそう。
録画予約しておけばよかった。

冷房の効いた部屋でパンイチでくつろぐ姿を想像すると、胃のあたりがムカムカした。

どうしてまだ帰ってこないんだよ。
芳賀のばかやろう、はがやろう。

「え……せっちゃん? どうしたの?」

こっちの気も知らず、コンビニの袋を片手にガサガサとやってきた芳賀は呑気に言った。
いつもは愛嬌のある右の八重歯が、いまは憎たらしい。

「おれ、今日せっちゃんと約束とかしてたっけ?」

「してないよ」

「あれ、終電は? もう十二時過ぎてるけど」

「十二時過ぎてるなら、もうない」

「……なんかあった?」

ええ、まあ。
あったね。いろいろね。

主な原因は、はがやろう。

お前様だよ。