「おまえ、ちゃんと生きてるの?」
正美ちゃんからの電話で、わたしは自己嫌悪の漂流から現実世界へと引き戻された。
シャワーも浴びずに半日以上床に横たわっていた身体は、油膜で包まれたようにべったりと重い。まぶし過ぎる陽射しに照らされて、いまにも着火してしまいそうだ。
でっちゃんは今朝も規則正しくランニングホイールを回している。からからからから。わたしも回されてしまいたい。
「生きてるよ。正美ちゃん、変なこと言うね」
「いや、死んでただろ」
たった一言二言交わしただけだというのに、どうしてわかってしまうんだろう。正美ちゃんは昔から勘が働く。
「あいつとなにかあった?」
「なにもないよ。順調だよ」
わたしは語尾に音符が三つつきそうなくらい声を弾ませて言った。それなのに正美ちゃんは「嘘つけ」と言い切った。
「おれ、いまからそっち帰るわ」
「え、駄目だよ。せっかくの帰省なのにわたしのせいで帰ってきたりしないでよ」
「飽きた。おまえ以上にしゃべるおふくろにも、毎晩毎晩、晩酌につき合わせる親父にも、飽きた。あと、蝉がうるさい。だからべつにおまえのために帰るわけじゃないから」
胸がぎゅっとした。正美ちゃんは昔から嘘がへたくそだ。