大好きな服でいっぱいのバイト先に、愛してやまない音楽たち。帰省すれば離れがたくなってしまう和風の実家と、その縁側でぐるりと丸まった三毛猫。

 SNSに無防備に散らばった彼の欠片を集める手は止まらず、切り絵のように繊細なペールトーンのワンピースばかりが下げられたわたしのクローゼットはみるみる色濃くなり、動画サイトのお気に入りチャンネルはがちゃがちゃしたインディーズバンドがずらりと並ぶようになった。


 ――キヨの舌、どうなってるんだよ。

 ――おいしいよ? 正美ちゃん、薄味派なんだね。

 ――いや、おまえがおかしいよ。それにその服はどうしたわけ?

 ――変?

 ――変じゃないけど……。


 学食にハマったと言って、ちょくちょく正美ちゃんの大学に足を運んだ。それはわたしが選択したことじゃなくて、そうするしかないような、そうしないとおかしくなってしまいそうな、わたしの衝動が勝手にやったことだった。『飲み会のメンツが足りない』とSNSでぼやいていた先輩の友達の近くに座って、「夏休み前に、ぱあっと飲み会とか行きたいな」と口にしたのだって、わたしの口が勝手にやったことだった。

 わたしはこわい女だろうか。

 エアコンの吐き出す風に煽られながら、獣のようにぐしゃぐしゃになって泣いた。