改めて確信を持った瞬間、彼はさっと目を逸らし、何事もなかったように友達と笑い合った。

 彼は、わたしを覚えていなかった。

 あのときは制服だったから。あのときはろくに化粧をしていなかったから。あのときはほんの短い会話だったから――彼がわたしを覚えていなかったのは、少しもおかしなことじゃなかった。

 それでも、わたしの胸は凍えるように静まり返り、笑いに満ちた学食のなかで一方通行の思いだけが残った。

 帰宅したわたしは真っ茶色の肉じゃがでカラカラになった喉を大量の水で潤せながら、ふと思い立ってパソコンをひらいた。

 学食で聞こえてきた彼の名前はとてもめずらしく、本名かあだ名かさえもわからなければ、彼がSNSを使っているかどうかももちろんわからなかった。

 駄目でもともと。そんなに簡単に見つかるわけがない。そう言い聞かせて彼の名前を検索すると、あまりの警戒心のなさに心配になってしまうくらいすぐに彼が見つかった。