軽口を叩き合いながらリビングへ進むと、先輩はふいに口をつぐんだ。わたしを見つめる瞳に熱がこもる。

 今日も噛むのかな。わたしのお餅にすぐさま緊張が走る。

 けれど先輩の唇がたどり着いたのは、お餅ではなかった。

「えっ? えっ?」

 唇から唇が離れたとたん、少しも色気のない声を出してしまった。ずっと待っていたキスの続きが、こんなにもとつぜんやってくるとは思っていなかった。

 先輩が照れくさそうに笑う。

「だってほら、歌ったし……だめ?」

 ううん。だめなわけ、ない。ふるふると首を振ると、先輩の唇がふたたび重なった。包み込むように肩に置かれた手は、すぐにわたしの身体と馴染んだ。

 好き、大好き、ああもう大好き。もう一生このままでいい。このままがいい。

 きっとわたしはこの瞬間のためにこれまで生きてきた。

 背中に腕を回せば、呼応するように先輩の身体が汗ばんだ。その温もりも、その手触りも、そのにおいも。すべてを貪り、すべてを味わう。唇のあいだをわずかにあければ、やわらかな舌がぬるりと潜り込んできた――と同時に、ピルピルピルピルピルと高音が鳴り響いた。

 唇が、ぱっと離される。