「でもっ……。それなら、それなら正美ちゃんはどうするの? 好きな人がいても、その人のタイプを気にしたり、そのタイプと自分を比べたりはしないの?」

「しない。時間の無駄」

 それにそんな関係、続くわけないだろ? 正美ちゃんはひややかに言い放った。

 スマホにあてた右耳がじりじりと熱をもち、目の前のゲージではでっちゃんがキューキュー鳴いた。かまって欲しいのだろう。わたしはふっくらした頬をそろりと撫でた。指先がやわらかな毛に埋もれる。

「それよりどうなんだよ、おまえは」

「わたし? わたしはいい感じでやってるよ。先輩すごくやさしいし、でっちゃんみたいだし」

「はっ? おまえなに言ってるの?」

 今日いちばんの不快を露わにされた。眉間に深く刻まれた二本の皺が目に浮かぶ。

「あ、なんか電波悪いみたい! 熱中症に気をつけてね! じゃあ!」

 わたしはそそくさと電話を切った。すっかり熱くなったスマホのスクリーンには、べったりと脂が貼りついていた。