◆ ◆ ◆
「は? おれの好きな女の子のタイプ?」
電話越しの正美ちゃんは明らかに不機嫌だった。
正美ちゃんの帰省先は、ここしばらく全国最高気温を叩き出している。暑さでいらいらしているのか、質問にいらいらしているのかといえば、おそらくその両方だろう。
どうしてそんなこと訊くわけ? 強く問われたわたしは、仕方なく白状した。
「先輩の友達が、正美ちゃんのこと気になるんだって。それで訊いて欲しいって頼まれて」
シフトが被るたび、須永さんは仕事そっちのけで正美ちゃんのことをあれこれ訊いた。わたしに呪いをかけたくせに、須永さんはかなり図々しかった。
「あのさ、おれが気になることと、おれのタイプを訊くことになんの関係があるの」
「え? だって、好きな人のタイプは知りたいし」
「関係ないだろ」
「あるよ。大ありだよ」
反論すると、正美ちゃんは温度のない声で淡々と言った。
「タイプと自分がかけ離れてたら諦めるわけ? それともそのタイプに自分を寄せていくわけ? どっちにしても不誠実だし、おれならどっちのタイプの人間もぜったい好きにならないけど」