「おれ、一時期だけど、女の子とけっこう遊んでたんだ。合コンとかで知り合った子たちなんかと」

 須永さんの呪いが、目の前からやってきた。

 それって。それってつまり――

「誰とでも寝てたってことですか」

 直球だった。直球だったけれど、他の言葉を考える余裕もなかった。

 先輩の眉が悲愴に寄る。それでも、決してわたしから目を逸らしたりはしなかった。

「毎回は、してない。でも、うん。そうだな。そういうことだな」

 このベッドで、その唇とその指先で。

 瞬時に()が浮かんでしまい、胃が引き攣った。無意識に息を止める。残り香なんて残っているわけないのに。

 突きつけられた告白を受け入れられず、わたしは膝を抱えてうつむいた。先輩は躊躇いながらも、ぽつぽつと話を続けた。

「つき合ってた彼女と別れて、それでなんか、いろいろどうでもよくなって。誰でもいいから誰かといたくて。だから、ほんとうに誰でも、どうでもよかったんだ」

「……誰でも、どうでも?」

「うん。どんな子だったとか、どんな話をしたとか、そういうのぜんぜん覚えてないんだ。すごく失礼な話だけど。そういう、その場しのぎの関係だった。そんなの、さらに虚しくなるだけなのにな」