――……ベッド、狭くなっちゃうじゃないですか。
――いいだろ。おれ、お客様なんだから。
――それ自分で言います?
――言う言う。
最初は言葉で。そのうちに指先で、爪先で。
先輩はわたしを突つき、わたしはそれを穏やかに煽り、わたしたちは小さな動物のように丸まって喉を鳴らし、じゃれ合った。
――これ、エスキモーキスっていうの知ってた?
鼻先をすり合わせ、先輩が囁いた。そのときにはもうほとんど唇は触れ合っていて、わたしは身を任せるように瞼をおろした。もっと先へ、もっと深くへ進みたい。
けれど先輩は先へ進むどころか、ぴたりと動きを止めた。
どうしたんだろう。ぼんやり考えていると、ベッドが大きく揺れた。先輩がわたしに背中を向けたのだ。勢いよく、まるでわたしを突き放すかのように。
そしてそのままお互いに一言も発することなく、朝を迎えた。
いったいなにが悪かったんだろう。先輩から連絡はなく、わたしから先輩に連絡する勇気もないまま一週間が経った。そして昨日の夜になって
『明日ちょっと会えない?おれバイト遅番だから遅い時間になっちゃうけど』
と誘われた。
これはどういうことだろう。わたしたちはどうなってしまうんだろう。