おお、すげえ片付いてる。へえ、インテリアはシンプルが好きなんだ? デグーってはじめて見た! うっわ。コーヒーメーカーあんの? これ、高いやつじゃん。いいなあ。て、おれコーヒー飲めないんだけどね。

 先輩はくるくる表情を変え、わたしはぐんぐん魅入った。そして日付けが変わり、終電がなくなった。

 いくら魅入っていたとはいえ、迫りくるタイムリミットに気づいていないわけじゃなかった。別れがたくて、気づいていない振りをした。そしてそれは、きっと先輩も。

 帰る気も帰す気もないわたしたちは、そわそわと時間が過ぎるのを待ち、「終電なくなっちゃったね!」と確認するように言い合った。

 わたしがベッドに寝転がってくすくす笑うと、先輩は「ほんとうにおまえって無邪気だな」とからかった。

 くすぐったくて、もっとそうして欲しくて。わたしは「子どもって言ってるんですか?」と反発した。


 ――いや、そういうんじゃなくてさ。


 先輩が声のトーンを落として言った瞬間、空気がいっぺんした。

 甘く、におやかに。とろとろと、濃密に。

 終わりとはじまりは隣り合わせで、それを後押しするように先輩はわたしの隣に寝転んだ。体温が、一度上がる。