「あ、冗談、ですか……」

「うん、冗談。どんな反応するかな、と思って」

「からかわないでください」

「ごめんごめん」

 まあ、そういうのはそのうちね。先輩は何気なくつぶやいて視線を落とした。

 いくら待ってみても、「冗談だよ」のフォローもなければ、視線を上げてくれることもない。触れ合っていたはずの爪先は、いつの間にか離れていた。

 いっしょにいるのに、ものすごく遠い。居たたまれなくなってうつむいていると

「キヨちゃん」

 ふいに呼ばれて、顔を上げる。先輩はまだ視線を落としたままで、やっぱりわたしは崖から落っこちた気分になった。

「ほら、ガーリックシュリンプ。早く食べないと冷めちゃうよ?」

「あっ、はい……。いただきます」

「またかしこまってる」

 くすくす笑いながら伏せられた睫毛は均一に濃密で、「そのうち」がいつなのかなんて、もちろん訊けなかった。

 そしてその答えは、すぐさま結果となって現れた。