差し出されたメニューをめくると、鮮やかなノンアルコールのカクテルがずらりと並んでいた。グラスには小さなパラソルやパイナップルが添えられて、ハワイアンダイニングらしさたっぷりだ。

「わあ、これは迷うな」

「キヨちゃんお酒飲めないから、ノンアルカクテルの多いところにしといた。あとほら、海老好きって言ってたから。ガーリックシュリンプなんかも好きかなって」

「ありがとうございます。ガーリックシュリンプ、大好きです」

 気配りがすごいな。正美ちゃんが聞いたら「女慣れしてる」と一蹴するに違いないけれど、他愛ない会話を覚えていてくれたのは真っ直ぐにうれしい。

 ドリンクはすぐに運ばれて、先輩とわたしはグラスをぶつけ合った。子どもをあやすような顔で、改めて「バイトおつかれさま」と言う先輩の目は、今日もつやつやしている。

「みんな」がいないということは、このまぶしすぎる視線はわたしに集中砲火されることになる。思わず全身の毛穴がぎゅっと引き締まった。うれしいと苦しいはよく似ているのかもしれない。

「バイト、どうだった?」

 琥珀色のビールを揺らし、先輩が訊いた。