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「ただいま、あーちゃん」
「おかえりなさい、みーちゃん。いつもより早いね？」
　降り続く雨で外は暗いものの、時計はまだ六時を少し過ぎたところだった。つま先立ちでキッチンに来たみーちゃんから、ぽたぽたと水滴が落ちる。
「雨がひどいから早く帰してもらえたの。ヒールのなか、びっちょびちょ」
「ごめん。夕飯、まだつくってなくて」
「急がないでいいよ。先にシャワー浴びてくるね」
　みーちゃんは濡れた足跡を残してシャワーに向かった。
　前に焼きそばをつくったときは、麺をほぐすための水を入れ過ぎてべちゃべちゃになった。だから今日は気をつけるつもりが、また水を入れ過ぎた。急いでキッチンペーパーをもぎとって水を吸わせる。ざわざわ湿っていくキッチンペーパー。指先にぬるい水が伝わる。ぎゅっと下唇を食(は)んで、麺をほぐした。粉末ソースとよく混ぜて、フライパンに蓋をする。