そして右足の裏に秘密を隠して家に帰ると、手のひらが飛んできた。今日は新しい彼氏とのデートで、お母さんの機嫌のいい日だと思っていた。なんで? どうして? 思っているうちに手のひらは足に代わって、そのうちにベルトになった。どうやらデートはドタキャンされたようだった。
 そんな日々が私にとっての日常だった。だから最初のうちは、みーちゃんとの生活はおままごとみたいに思えた。そのときを迎えれば、終わってしまうおままごと。
 だけど何回寝ても、何回起きても、目をひらけば同じ部屋のなかにいて、みーちゃんがそこにいた。
 からっぽじゃない冷蔵庫。ハンガーにかかった、たくさんの清潔な服。
 これはおままごとじゃないんだ、と次第に思えるようになった。
 それをみーちゃんに伝えると、「だって、ずっとあーちゃんの味方だもん」と笑ってくれた。ふたりきりの、ふたりだけの守られた世界だった。
 あの日、ベランダに出るまでは――。