ビニールに包まれていない出来立ての食べ物はひさしぶりで、身体じゅうがよろこんでいた。それでもやっぱり居たたまれなくて、みーちゃんとまともに顔を合わせることはできなかった。
 別れ際に「ありがとうございました、お姉さん」と頭を下げると、みーちゃんは「はじめてお姉さんなんて呼ばれちゃった」と照れくさそうにした。
 その日から顔を合わせるたび、ファミレスだったりフードコートだったり、いろいろな場所に連れられた。気がつけばしっかりと顔を上げて目を合わせ、ときには手をつないだり、腕に寄りかかるような、そんな距離になっていた。
 みーちゃんは私の名前の頭の文字をとって「あーちゃん」と呼び、私も同じように「みーちゃん」と呼んだ。「ちゃんづけなんて、何年ぶりだろう」と言ってはにかむみーちゃんは、女の人じゃなくて女の子の顔をしていた。
 仕事で大きなミスをしてしまったと言ったときも、傷ついたちいさな女の子の顔だった。