成海かなでは祈るような気持ちで掲示板に張り出されたクラス分けを見ていた。
 私立東星学園高等部では、年に一度クラス替えがある。希望進路別に大まかに分けられるようで、大学進学希望が四クラス、短期大学や専門学校が二クラス、就職希望が二クラスだ。
 かなでは七組に自分の名前を見つけた。就職希望者のクラスだ。これで、第一関門はクリア。
 問題はかなでの恋焦がれる大好きな人のクラスだ。彼の希望進路は特殊だが、一応就職になるんじゃない? と言っていた。
 つまり、同じクラスになれる可能性は二分の一。

 両手を胸の前でぎゅっと握り、祈りながらクラス分けを目で追っていき、そして。
 速水陸。その名前を同じクラスに見つけ、かなでは頰が熱くなるのを感じた。

「あ、あったぁー!!」

 かなでは人目も憚らず歓喜の声を上げた。喜びのあまりその場でぴょんぴょんと跳ねていると、後ろから大きな手で肩を押さえられる。
 振り向くと、かなでの大好きな人がそこに立っていた。

「陸くんっ!」
「成海、ここで跳ねないの」
「はいっ! でもね、でもね、私と陸くん同じクラスだよ! すっごく嬉しくて!」
「まぁ、あれだけたかむーのところに押しかけてたらね……」

 たかむーというのは、前担任の高村のことである。
 高校最終学年である三年生。絶対に大好きな人と同じクラスになりたい、という強い意志のもと、かなでは高村や学年主任のもとへ通い詰めたのだ。
 そのおかげかどうかは分からないが、無事想い人と一緒のクラスになれた。

 頑張ってよかった、とほくほくしていると、陸がかなでに笑いかけてくれる。

「成海、たかむーたちにお礼言ってきたら?」
「うん! そうする!」

 また後で、教室でね! とかなでが手を振ると、陸も笑いながら手を振り返してくれた。