「お母さん。外出許可、出してくれる?」
「え、」
「私、最後に行きたいところが、ある…」
「どこ?」
決めている。そこは…
「カラオケ」
「カラ、オケ?」
「そう」
今まで行ったことがないカラオケ。最後なんだから、行きたい。
「…。分かった。聞いてみるね」
しばらく黙ったあと、お母さんは、言った。
「ありが、とう」
「もう、寝よう?お母さん、帰るから」
「うん。おやすみ」
「おやすみなさい」
目を閉じても、中々寝付けなかった。
ようやく寝付けたのは、深夜だった。



朝の日差しで、目が覚めた。
「おはよう」
目が覚めたときには、お母さんがもういた。
「外出許可、どうなった?」
「…。先生から、お話を聞いてからね?」
「…。今、から?」
「うん」
お母さんがそう言ったあと、先生が来た。
「天舞音ちゃん。今から言う事、聞いてくれる?」
「はい」
「外出許可は、良いんだけど、無理しないってことだけ約束してくれるかな?」
「はい!」
「うん。でね、条件があるんだ」
「何、ですか?」
「条件1。14時までに帰ってくること。2。薬を絶対に忘れないこと。3。1人で行かないこと。これが、守れるかな?」
答えは、決まっている。
「はい!維斗と行くんで、大丈夫だと思います!」
「そうか、維斗と…」
そうだ。維斗は、私の主治医の息子だ。
「はい!ありがとうございます!」
「うん」
「良かったね、天舞音」
「うん!お母さんも先生もありがとう!」
早速、維斗に伝えないと!
『維斗‼外出許可、出た!』
『ホントか!?』
すぐ既読が付いた。
『うん!だから、付き合ってもらえると、嬉しいんだけど…』
『どこだ!?』
『カラオケ‼』
『了解!いつだ?』
『明日!』
『了解!』
フフフッ!楽しみだな!
「お母さん!洋服を、持ってきて欲しい!」
「良いわよ。何が良い?」
「そうだな〜」
カジュアル?クール?セクシー?キュート?うーん、やっぱりこれかな?
「カジュアルコーデ!とりあえず、カジュアルコーデを全部持ってきて欲しい!」
ちょっと、大変かもな…。
でも、お母さんは、嫌な顔1つせず「良いよ」と言ってくれた。



夜、浮かれっぱなしで中々寝付けなかった。