ピヨヨヨロ
今日も、生きているんだ。
良かった。
「天舞音?起きてる?」
身体を起こすとお母さんが眉を下げたあとほっとしたような顔を見せた。
「うん」
「ご飯、食べれる?」
「ごめん、食欲ないんだ。これも、近づいているって証拠、かな?」
「ううん。違うわ」
お母さんの声に謝りたくなる。
【近づいている】
そう、私は先日余命僅かだと宣告された。生まれつき、私には病気だった。
心臓病。そのワードは、切りはずせない。
「じゃあ、行ってきます」
「いってらっしゃい」

「天舞音」
「維斗」
私の、彼氏。私の病気を知っていて、余命僅かだと知っている。
「じゃあ、行くか」
「そうだね」
今は、ゴールデンウィーク。余命僅かだと教えて、何かやりたいことは、ある?と、聞かれ水族館とか色々と付き合って貰った。
今日は、ゲームセンター。
ユーホーキャッチャーをやりたい、と行ったら付き合ってくれた。
「行こうか」
「うん」

「わぁ〜!」
「すごい!凄いよ、維斗!」
「あぁ、そうだな」
初めてのゲームセンターに私は舞い上がっている。そんな、私の「初めて」は山程あるから維斗も重々承知のうえだ。
「維斗!これ取って!」
私が指指したのは、可愛いうさぎのぬいぐるみ。
「えぇ〜、難しそうだけど…
 まぁ、良いよ」
「やった!」
維斗は、優しい。病気の私でも彼は離れなかった。
「おし、やるか」
ウィィィーン
「お、行くかも」
「本当!?」
「あぁ」
しばらく見ていたけど、何回も何回も惜しかった。

「ねぇ、もう良いよ」
「じゃあ、ラストチャンス」
その時、奇跡はおきた。

「あぁ〜!落ちた!」
「イェーイ!」
パチンッとハイタッチをしあった。
「維斗!ありがとう!」
「ま、まぁ」
顔を赤くしていた。照れているみたい。可愛い♡
「じゃあ、もうちょい帰るか」
「う、うん!」
途端に息苦しくなった。あ、いつもの発作だけど何かが違った。
フラフラとおぼつかない足を懸命に動かすも、ついに私は倒れてしまった。
「天舞音!」
薄れる意識の中で維斗の声が脳内に聞こえた。