2人の家には大きな畑があり、1日の始めは畑仕事からだ。
 今日は初めて畝をつくってみようといってもらった。
 ミンと一緒に土を耕し、畝をつくっていく。
 畑仕事はここにきてから毎日しているし、ミンのを見てるからできるはず。
 「ロマ、ほらどんどん幅が狭くなってるぞ」
 ミンが笑いながらそう言うからまさかと思って後ろを振り返ると僕の作る畝は曲がっているし、どんどん幅がくなってきているしで、きれいなものではなかった。
 「わぁ! 」
 すると今度はカイルが重い桑と柔らかい土に足を取られしりもちをついていた。
 「はっはっはっ、2人ともまだまだだなぁ」
 そんなカイルをひょいと起こしながら大笑いするミンの畝はまっすぐに均等で美しい。
 
 種をまき、水を与えてひとまず休憩だ。
 トマがパンにレタスとトマト、チーズをのせて運んできてくれる。
 朝日を浴びながらの朝食は格別。
 そよ風が心地いい。
 
 2人は町の長という役割らしく普段から忙しそうにしていることが多い。
 少し町土外れに家があるから町との行き来も簡単ではない。
 トマもミンもすごく元気だし、全然老いを感じないけどやっぱり歳に抗えないこともあるみたいで力仕事や少し危ない仕事は僕らが率先してやった。
 トマから料理も教えてもらって最近ようやく包丁が使えるようになってきたんだ。
 カイルはまだ危なっかしいけど。
 「あ。今絶対俺の事”危なっかしい”って思っただろ! 今に見てろよロマ! 」
 「え、なんでわかったの? 」
 「ほんとに思ってたのかよ、このヤロー」
 こんな会話で笑いが起こるのもこの家ではよくあることだ。
 今日の夕飯は初めて僕とカイルで作ったスープとトマが焼いたパン。
 「あら、よくできてるわよ。美味しいじゃない」
 トマはそう言ってくれるけど、トマのスープにはまだまだ及ばないし
 ジャガイモに火が通りきっていなくて少しシャクシャクする。
 「次はホクホクなじゃがいも目指そうな」
 目指せトマみたいなスープ! そんな目標を2人で掲げていると
 
 「2人とも明日少しだけ町の方へ顔を出してみない? 」
 トマからそんな提案を受けた。
 「やっぱりここにずっと箱詰めも良くないからねぇ。町に行けば同い年くらいの子供たちが沢山いるし」
 ミンも後に続いて言う。
 町におりる。
 全く考えたことのない選択肢に2人で顔を見合わせる。
 町に下りると言う事に抵抗がないわけじゃない。
 でも、せっかくの2人からに提案に
 「行ってみるよ」
 そう笑顔で返事をした。