走って走って、沢山走って。
どれくらい走っただろう。
いつまで走っても「ここなら大丈夫」と思えなかった。
ずっとのどで呼吸しているみたいに苦しい。
恐怖と興奮が入り混じった感情で苦しいけど疲労は感じなかった。
「ロマ、あれに乗り込もう」
振り向きざまにカイルが指さす貨物列車に乗り込んだ。
見つからないように大量にある荷物の隙間に入りようやくの思いで体中の息を吐ききる。
「僕たち、外に出たんだ」
信じられない。まだ実感がわかないけど数時間前と違う床が、空気が、天井が、僕らにそれを教えてくれた。
「ありがとロマ。最高だよほんとに」
興奮気味のカイルも今だけは声を押し殺して、でも飛び切りの笑顔で喜んでいた。
感謝するのは僕の方だ。
カイルがいなければ僕はいつまでもあの牢獄の中だったから。
「行こう。俺らの事を知らない人しかいない遠い町まで」
「うん、行こう」
カイルとならどこまででも行けるよ。
心の中でそうつぶやき、安堵からくる強力な睡魔に勝てず重い瞼をそのまま閉じた。