――場所は、派出所。
 新堂さんと合った翌日の今日、私は放心状態のままチロルを撫でていると、横から鈴木さんが顔を覗き込んできた。


「粋ちゃん、大丈夫? 今日はボーっとしてるみたいだけど」

「あ……はい」

「どうしたの? 何か悩みでもあるの?」

「実は、偽彼氏と彼の中学からの同級生の仲が悪いので、その原因を知る為に二人と付き合っていた元カノの家に行ったんです。そしたら、元カノが二股をかけていたそうで、二人は真実を知らないままお互いいがみ合ってるということが判明しました」

「それは大変だったね」

「二人がちゃんと話し合えれば、誤解が解けるかもしれないのに……」

「男同士はなかなか素直になれないところがあるからね。……で、粋ちゃんはどうしたいと思ってるの?」

「えっ、私……ですか」

「何かをしてあげたいから元カノに話を聞きに行ったんでしょ」


 私は加茂井くんと木原くんのいがみ合ってる姿を見ていたら、無意識のうちに答えを探していた。
 でも、それは自分自身が仲違いしてしまった理由を知りたかっただけ。何かしてあげようとは、特に考えてもいなくて……。


「そうですが、私が二人の為に何か出来るのでしょうか」

「それは僕にもわからない。でも、もしかしたら仲直りの架け橋になれる可能性があるかもしれないね」

「仲直りの……架け橋……か」


 もし、私が動かなかったら、二人はこの先も同じことで憎しみあったまま。
 互いに根に持つくらいだから、きっと私の想像以上に苦しい想いをしたのだろう。
 本当は仲直りして欲しいけど、この問題は私が触れてもいいのかわからない。
 

「あっ、そうだ。さっきフクちゃんの目撃情報が入ったよ」

「えっ、どの辺ですか?」

「隣町の警官が先ほど多分フクちゃんらしき猫をみかけたみたいで連絡をくれてね」

「隣町……か。思った以上に近くにいるのに、なかなか会えないなんて……」

「また目撃情報があったら伝えるね」

「ありがとうございます!」


 フクちゃんが失踪してから、かれこれ3ヶ月。
 一体、どこに行っちゃったのかな。お腹は空いてないかな。ケガをしてなければいいけど……。
 フクちゃんの悩みに重ねて加茂井くん達の悩みまで降りかかってくるなんて、気持ちが追いつけないや。