――場所は、派出所。
目の前は交通量の多い大きな道路に面しているので、時より排気ガスが舞っている。
鈴木さんは近所を散歩している高齢者と話を終えた後に定位置についたので、私はその隣について車道を眺めたまま話を始めた。
「せっかく彼の願いを叶えてあげたのに、文句を言われました」
「どうして?」
「今日の昼休みにメガホンを使って校庭から校舎に向かって『好きだ』と大声で告白したのに、お前には羞恥心ってもんがないのかって」
「あは、あははは……。粋ちゃんって結構根性あるんだね。でも、どうしてそんなことをしたの?」
「彼の運命を変えてあげたかったんです。でも、好きな人に想いを届けるのって難しい。特に私の場合は、彼女がいるところから始まってるから……」
勇気がなかった自分を何度も何度も後悔する。上手くいくか否かは別として、加茂井くんに恋が始まってからすぐに気持ちを伝えていればなって。
もし、赤城さんと付き合う前に告白してたら、私が本命の彼女だったかもしれないのに。
「本気で彼のことが好きなんだね」
「はい。だから、自分に出来ることはやっていこうと思って実行したんです。でも、上手く伝わらずに……」
「じゃあ、次は粋ちゃんなりの方法でアピールしてみれば?」
「私なりのアピールとは?」
「それは自分で考えるんだよ」
「でも、私は恋愛初心者だし、恋愛ってどう進めたらいいかわからなくて」
好きと伝えても平行線な関係。
加茂井くんは赤城さんと別れたばかりだから当たり前なんだけど、現状からして私達の関係が好転する可能性は低い。
いま精一杯頑張っている分どうしたらいいかわからないし、好きという言葉以上の情熱をどうやって伝えていけばいいか。
「恋愛には教科書がないし正しい答えもない。だから、自分なりの方法を見つけていかないとね」
――恋愛って難しい。
私の恋愛は特殊な方だと思うけど、忘れられない人がいる人を振り向かせるのは、あと何回障害を乗り越えればいいのかな。
加茂井くんは赤城さんを忘れられるのかな。万が一忘れることが出来ても、私に振り向いてくれるのかな。好きになってくれるのかな。
なんか、その兆候が見られない分、自信ないや……。