谷岡さんが学校へ来なくなってから、三日が過ぎた。一日目は体調不良で休みと言っていた担任も、谷岡さんが休んでいる理由を言わなくなった。
谷岡さんはただ体調不良で休み。きっと風邪を引いてしまったのだろう――。頭ではそう思っているけれど、心では何かが引っ掛かる。胸のざわめきが止まらなかった。
「ねぇねぇ聞いた? 谷岡さんのこと」
「えーなになに?」
「なんか放課後教師たちが話してるの聞いたんだけどさ……」
教室の隅でコソコソ話している女子生徒の会話が聞こえてくる。どうやら谷岡さんのことを話しているそうだ。
前の私だったらきっと、いや絶対に話しかけるなんてことはなかったけれど、いまだったら話しかけることができる。
自分のことよりいまは谷岡さんに何があったのか気になるのだから。
「あ、あの! 谷岡さんがどうかしたんですか?」
「え? あぁ、奏真さんか。奏真さんって谷岡さんと仲良かったよね?」
「は、はい。同じ、声を発せられない病気だったので」
言っていいのか分からなかったものの、食い気味に私はそう言った。「じゃあ話してもいいかな」と言いながら女子生徒は私の耳にそっと打ち明けた。
どんな真実が待っていようとも、私は谷岡さんのことをもっと知りたい。受け止めてあげたい。そう思っていた。
「あのね、谷岡さん実は――」
私は気づけば走っていた。確か女子生徒に教室で谷岡さんの真実を聞いたあと、すぐに教室を飛び出していま道路を全速力で駆けている。
谷岡さんに会いたい。会って話がしたい。どうしてそんな “嘘” を吐いたのか知りたい。そう思っていることは確かだ。
「はぁ、はぁ……足、上がんない……」
もう二十分くらい休憩もないまま走っているからか、体力の限界が来てしまった。今更自分が運動不足だということを恨む。
空を見上げると、雨が降りそうなねずみ色の雲が広がっている。きっと谷岡さんもこんな気持ちだったのだろう。心の限界が来ても、私を勇気づけようとしてくれていた。
だから今度は、私が谷岡さんの話を聞いてあげたい。谷岡さんの優しい嘘に隠されている真実を知りたい。
帰り道は、この曇り空を晴天にしてみせる――。
私はもう一度前を向いて、駆け出した。
谷岡さんはただ体調不良で休み。きっと風邪を引いてしまったのだろう――。頭ではそう思っているけれど、心では何かが引っ掛かる。胸のざわめきが止まらなかった。
「ねぇねぇ聞いた? 谷岡さんのこと」
「えーなになに?」
「なんか放課後教師たちが話してるの聞いたんだけどさ……」
教室の隅でコソコソ話している女子生徒の会話が聞こえてくる。どうやら谷岡さんのことを話しているそうだ。
前の私だったらきっと、いや絶対に話しかけるなんてことはなかったけれど、いまだったら話しかけることができる。
自分のことよりいまは谷岡さんに何があったのか気になるのだから。
「あ、あの! 谷岡さんがどうかしたんですか?」
「え? あぁ、奏真さんか。奏真さんって谷岡さんと仲良かったよね?」
「は、はい。同じ、声を発せられない病気だったので」
言っていいのか分からなかったものの、食い気味に私はそう言った。「じゃあ話してもいいかな」と言いながら女子生徒は私の耳にそっと打ち明けた。
どんな真実が待っていようとも、私は谷岡さんのことをもっと知りたい。受け止めてあげたい。そう思っていた。
「あのね、谷岡さん実は――」
私は気づけば走っていた。確か女子生徒に教室で谷岡さんの真実を聞いたあと、すぐに教室を飛び出していま道路を全速力で駆けている。
谷岡さんに会いたい。会って話がしたい。どうしてそんな “嘘” を吐いたのか知りたい。そう思っていることは確かだ。
「はぁ、はぁ……足、上がんない……」
もう二十分くらい休憩もないまま走っているからか、体力の限界が来てしまった。今更自分が運動不足だということを恨む。
空を見上げると、雨が降りそうなねずみ色の雲が広がっている。きっと谷岡さんもこんな気持ちだったのだろう。心の限界が来ても、私を勇気づけようとしてくれていた。
だから今度は、私が谷岡さんの話を聞いてあげたい。谷岡さんの優しい嘘に隠されている真実を知りたい。
帰り道は、この曇り空を晴天にしてみせる――。
私はもう一度前を向いて、駆け出した。