翌日、手紙が届いた。折り畳まれた紙だ。差出人の名前は月紫。
「つきむらさ・・・・・・つきし・・・・・・あ」
 少し考えて、つくしと読むのだろうと見当をつけた。昨日の子だろうか、と。
 中を開いてざっと目を通す。予想通り、昨日助けてもらった彼女からのものらしい。ハンカチは故郷の母からの贈り物なので、申し訳ないがどうしても返して欲しいことが主に記されている。そうだ、結局昨日医務室まで送り届けてもらったあとに、ハンカチをそのまま彼女は帰ってしまったのだ。
 とても綺麗な字だ。筆だろうか、黒々とした水茎だ。再び差出人に目を戻すと、下に宛名が書いてあることに気づいた。
 ──飛輪寮(ひりんりょう) こうさま──
 飛輪寮、というのは煌たち金烏の獣人が暮らす寮の名称だ。ちなみに、玉兎の寮は月虹寮(げっこうりょう)という。
 しばしその流れるような美麗な字に目を取られ、それからランドリールームへと歩き出したのだった。