次はこれまで通りに肉体があった。ただし、思い通りにならない肉体だ。
 煌は勝手に、喋る。── 俺、目、いいんだよね。月紫、真っ白だから見つけやすかった。
 これは、いつ言ったんだろう。周りはたぶん、夕日の鋭い、図書館の中庭だ。
 また、景色が変わる。
 少し東寄りの太陽、乾いた地面。夏の空気の中庭。横で、寝転びつつ頬杖をつく月紫が喋る。
「私なんか、ウサギ姿でここ行ったら埋もれちゃいそう・・・・・・かくれんぼとか有利じゃない?」
 また喋る──残念ながら、俺は一瞬でわかる。そう言ってから、にやっと笑う。
 これは覚えている、ホワイトガーデンの話をした日だ。
 周りが切り変わる、今度は道だ。月紫と並んで歩いている。雨上がりだろうか。少し地面が濡れている。
「それにしたってよく見つけられましたね、こんなにいっぱいいるのに」
 ──真っ白だからな、月紫は。
 そう言えば、月紫はいつだって不思議そうな顔になる。
「うーん・・・・・・」
 だけどそこには、限りない信頼と安堵が浮かんでいる──また、風景が変わる。

 ホワイトガーデンに戻ってきた。なんだこの目まぐるしい切り替えは。飽きなくていいけど。
 周りを見れば、また右の方に純白が見える。追いかけていけば、その先に──
『オシロイバナ』
 一輪だけ、ポツンと咲いている花を見つけた。