…誰もいない屋上。
…誰もいない放課後。
落ちていく夕陽。
僕、国元永久は今、屋上の柵の上に立っている。
足がすくむ。
すごく怖い。
と同時に、救われるという解放感が僕を包んだ。
ここから一歩踏み出せば、僕はもう救われる。
僕は決意を固め、一歩足を踏み出した。

―バタッ。

冷たい床。
冷たい風。
気づけば僕は、屋上の床に寝そべっていた。

「君、今何しようとしてた?」
「え………?」
青い空が広がっていた視界に、名前も知らない女子生徒が映った。

「死にたい?」
僕が何も言えずにいると、女子生徒は僕にそう聞いた。
すぅ、と息を吸ってから、こくりと頷くと、彼女はニコッと笑って、大きな声で宣言した。
「じゃあ私が、君の生きる意味になる!」