千世も、なにも妻として無理に紫雨を好きになる必要などなかった。

絡まっていた運命の糸が解けたとたん、紫雨への想いがあふれ出したのだ。


「…紫雨様。わたしも、初恋のお相手は…あなた様です」

「え…?千世の初恋が…俺?」

「…はい!わたしもうれしいです。こうして、初恋のお方と結ばれることができて…!」


千世の言葉に、紫雨は微笑む。


「千世、これから先もずっとずっと俺のそばにいてくれ。もう離縁なんてさせない」

「…ふふっ。もうそんなことは申しませんよ。わたしも紫雨様とずっといっしょにいたいです」


そう言って、純粋なまなざしを向ける千世。

しかし、その表情が曇る。


「ですが…。わたしは麗姫の呪いで長くはありません。なので――」


そのとき、紫雨が千世の唇を塞いだ。

それは2人が初めて交わす口づけだった。