千世が看病しようとするとも、人間嫌いの紫雨はそれを拒否し、頑なに食事も取ろうとはしなかった。


千世はそれでもめげずに看病を続けるが、紫雨は衰弱していくばかり。

紫雨は、幼いながらに死を覚悟していた。


そんなとき、意識が朦朧としていた紫雨がある言葉を発した。


「血がほしい…」


それを聞いた千世は、迷うことなく紫雨の口元へ自分の腕を持っていった。

飢餓状態の紫雨は、反射的に千世の腕に噛みつき生き血を吸う。


こうして、紫雨は正死の淵から生還することができた。


紫雨は、自分のために血を差し出した千世に徐々に心を開いていくように。

千世もまた、村のいじめっ子から守ってくれる紫雨に惹かれていた。


そうしてしばらくの間、大庭家の世話になっていた紫雨だったが、体中のケガも治り動けるようになると帰っていった。