紫雨の右腕はだらんと垂れ下がり、妖術は出せそうにない。


逆境に追い込まれた千世と紫雨。

ところが、なぜか紫雨は笑っていた。


「これで勝てたつもりか。俺も舐められたものだな」

「…なんだとっ」

「陰の鬼とやり合うのは久々だから、どんな力かと手を抜いてやっていたが。…遊びはここまでだ。千世に攻撃を向けたお前は絶対に許さない」


鋭い瞳で菊丸を睨みつけ、すべてのものをなぎ払う圧を放った紫雨。


――その後の勝負は一瞬だった。


紫雨に敗れた菊丸は、灰となって消えていった。



* * *



それから、数日後。

千世は、紫雨の看病に付きっきりだった。


看病といっても、傷はほとんど完治している。

紫雨が自分の妖術で治したからだ。


毒気が残っていて、少し治りが遅いくらい。