「ならば、手合わせいただこう。…だが、こちらは千世を攫われて怒り心頭中で、手加減はできないがな」

「そう言っていられるのも今のうちだ。千世さんといっしょにお前も食って、ボクの妖力の糧にしてやる!」


舌なめずりをした菊丸の頭から、髪の毛を分けるようにして2本の角が生えだした。

瞳は赤く染まり、牙もむき出しに。


その禍々しい菊丸の姿に、千世はごくりとつばを飲む。


空気も重くなったような気がして、まるで体にまとわりつくようだ。

これが、菊丸からもれ出る妖気であった。


紫雨と菊丸は、妖術を用いて戦いだす。


空を切り裂く稲妻、灼熱の炎、凍てつく氷の刃――。

千世の目の前では、それらが目にも止まらぬ速さで行き交っていた。


本来であれば、陽の鬼である紫雨のほうが妖力が劣るはず。