「…うわっ!!」


菊丸はなんとか体をひねり、ギリギリのところでそれを避ける。

しかし、肩をかすめ着物がわずかに焦げていた。


「…不覚だった。やはり、一瞬たりとも千世から目を離すべきではなかったな」


そんな声が聞こえたかと思ったら、千世を包み込むようにして紫雨が姿を現した。


「紫雨様…!」

「こわい思いをしたな。…1人にさせて悪かった」


紫雨の言葉に恐怖という縛りから解放された千世は、思わず目に涙が浮かんだ。


「謝るのはわたしのほうですっ…。紫雨様からいただいたお守りを…忘れてしまって」

「そうか。そのせいで、こんな低俗な鬼に付きまとわれたということだな」


紫雨は鋭い眼光で菊丸を刺す。


「だれが低俗だと?叢雲紫雨、しょせんお前は陽の鬼。ボクたち陰の鬼こそが真の鬼だ!」