「…住処?」


どう見たって、ただの洞窟。

こんなところに住んでいるという菊丸は、いったい――。


すると、宙に浮かぶ火の玉がぽつぽつとあちらこちらに現れだす。

この火の玉の現象も、千世にとっては摩訶不思議。


怯えながら、突然現れる火の玉を目で追っていると――。


「……ひっ…!」


千世から小さな悲鳴がもれる。

顔も引きつり、カタカタと震えだす。


千世は、洞窟の奥に灯った火の玉に照らされた…山積みになったあるものを見つけてしまったのだ。


――それは、人の死体。

女の死体が、折り重なるようにして積まれていた。


さっきから生臭い臭いが漂うと思ったら、あの死体の山からだった。


そこで、千世はようやく理解した。


菊丸は人間などではない。

人を食らう陰の鬼だと。