今日は、初めて2人で街へ出かける。


千世はいつも着ているものとは違う、かわいらしいよそ行きの着物を着て。

紫雨が用意したものだった。


街は、大勢の人でにぎわっていた。

人と人の間を縫うように華麗に先へと進む紫雨に、千世は必死になってついて行った。


しかし、徐々に紫雨との間が空いていき――。

はぐれそうになる寸前、千世の手をだれかが握った。


「…悪い。危うく置いていくところだった」


そう言って、その手を握ったのは紫雨。

男と手を繋ぐことは初めての千世は、ぽっと顔を赤くする。


「初めからこうしておけばよかったな」


紫雨は千世に微笑みかけながら、手をぎゅっと握りしめる。

恥ずかしさでいっぱいの千世は、赤くなった顔を見られないようにうつむいた。


呉服屋へ行き、本屋へ行き――。