きょとんとして首をかしげる千世。

紫雨は、なぜか悔しそうに唇を噛んでいる。


「俺がお前の血を吸ってできることは、“延命”のみ。…麗姫の呪いを完全に祓うことはできない」


陽の鬼は、陰の鬼よりも妖力が劣るといわれている。

いくら、そのあたりの陰の鬼よりも強大な力を持つ紫雨といっても、凶悪な麗姫の呪いを完全に打ち消すことはできなかった。


「これからも俺が毎日のように血を吸えば、二十歳を超えてもしばらくは生きながられるだろう。しかし…」

「ということは、わたしは紫雨様のお力をもってしても――」

「いつかは、…“そのとき”が訪れる」

「…そう…ですか……」


千世は言葉を失う。


両親が一縷の望みをかけた紫雨の妖力でも、麗姫の力には及ぶことができない。

千世はただ、いつか訪れる死を待つのみ。