しかし、これといった手がかりは見つからなかった。


そうして、千世が麗姫に呪われてから1年ほどがたったとき――。

ある人物であれば、その呪いを解くことができるかもしれないという噂を耳にしたのだった。


その人物こそが、叢雲紫雨。

大抵の陰の鬼の呪いであれば祓うことができると言われている陽の鬼。


辰之助と秀美は、藁にもすがる思いで紫雨に文を書いた。


娘の千世が麗姫に呪いをかけられ、紫雨ならばそれを解くことができるのではと――。


しかし、万が一呪いが解けたところで、またいつ麗姫が襲ってくるかもわからない。

親として、娘を生涯そうした災いから祓うことができるのは、強大な妖術を持つ紫雨しかいない。


だから、千世と婚姻関係を結び夫婦となって守ってほしい。


文には、ふてぶてしい頼みというのは承知の上で、千世を大事に思う内容がへりくだった文面で書かれてあった。