愛する人に見捨てられ、居場所をなくした千世は途方に暮れて、崩れるようにしてその場にへたり込んだ。


「…ううっ。…うぅ……」


千世は、声を殺して泣いていた。

雨は止むことはなく、千世の涙も枯れることはなかった。


…いったいこれからどうしたら。

なにを頼りに生きていけばいいのだろうか…。


いや、これ以上生きる意味もないのかもしれない。


千世が人生に絶望していた、――そのとき。


突然、雨が止んだ。


というよりは、千世のところだけ雨がかからない。


千世が驚いて顔を上げると、そこには一本の広げられた傘が。

その傘の()を握る腕をたどっていくと――。


「こんなところにいたら、風邪引くぞ」


傘を差し出し、自分が雨にぬれることは一切気にせず、千世を見下ろす紫水晶のような瞳。