驚愕の事実に、理解が追いつかない。


「彼女は…、父さんが決めた見合い相手だ」

「…お父様が!?ですが…正彦さんはあのとき、わたしが戻ってくるまでお父様を説得してくださると…」

「僕も…最初はそのつもりだった!でも、やはり父さんには逆らえなかった…。それに、鬼のところへ行った千世が、無事に戻ってくるかどうかもわからないというのに…」


――だから、待っていても仕方のないこと。


正彦の中では、千世に婚姻歴があると知った時点で気持ちが冷めてしまっていたのだった。


そこで、貞夫が決めた見合い相手と会ったところ意気投合し、すぐに婚約。

千世のことは忘れかけていたところへ、当の本人が戻ってきたため、正彦はひどく驚いたのだった。


正彦を想い1人で鬼のところへ向かい、しかも約束の離縁状まで持って帰ってきた千世。