見ると、それは正彦だった…!


少し髪が伸びたような久々に見る正彦の姿に、千世はうれしさのあまり目に涙が浮かぶ。


「…正彦さん!」


1人屋敷から出てきた正彦に声をかけ、歩み寄る千世。

その声に反応して顔を向ける正彦だったが、その表情はまるで鳩が豆鉄砲を食らったかのようだった。


「ちっ…、千世!?」


突然の千世の帰宅に、口をぽかんと開けて固まってしまった正彦。

そんな正彦に、千世は駆け寄って抱きつく。


「正彦さん、会いたかったです…!」


ぎゅっと正彦を抱きしめる千世。


「ほ、本当に…千世?」

「…はい!千世にございます!この通り、叢雲様から離縁状をいただいてまいりました…!」


千世は離縁状を正彦へと差し出す。

それを小刻みに震える手で受け取る正彦。


正彦はつばをごくりと飲みながら、おそるおそる離縁状に目を通す。