「千世さん、無理しないほうがいいですよ…!」

「ですが、わたしは…」


なにがなんでもこの山道を下りると言って聞かない千世。

そんな千世の姿に見かねた菊丸は、千世の前に背中を向けてしゃがみ込んだ。


「ボクが千世さんをおぶっていきます」


予想もしていなかった菊丸の言葉に、千世は恥ずかしくなり顔を真っ赤にさせる。


「なっ…なにを言い出すのですか、菊丸さん!そんなこと――」

「でも、その足では時間がかかりますよ?先を急ぐというのなら、ボクがおぶったほうが早いです」


ためらう千世。

だが、意地を張るよりもここは恥を忍んで――。


「で…では、お言葉に甘えて…。よろしくお願いします…」


千世は恥ずかしそうにうつむき、手をもじもじとさせる。

そんな千世に、菊丸はやさしく笑う。